医師臨床研修

医療行為の基準について

北海道大学病院における臨床研修医の医療行為に関する基準

北海道大学病院

平成16510日制定
平成21527日一部改定
平成22721日一部改定

基準の運用上の留意点

  1. 原則として研修医が行う、あらゆる医療行為には指導医の許可が必要である
  2. 救急救命時にはこの限りではないが、可及的速やかに指導医に確認または立会いを依頼する
  3. 北海道大学病院としての基準を各診療科で運用する際に、患者の状態により、レベルを上げることはあり得るが、下げることはしない

研修医の医療行為に関する基準

ベル1:研修医が単独で行ってよい医療行為

  • 初回実施時は指導医の立会いのもとで実施する
  • 困難な状況があった場合は、指導医に相談する

レベル2:指導医の許可を得た上で、単独で行ってよい医療行為

  • 研修期間の経過に伴う、研修医の技能の向上の判断(熟練度の評価)は症例経験数を踏まえ、指導医が能力評価を行った上で、研修医単独での施行を認める
  • 許可を与えるための、症例数や技術評価の基準は特に定めない
  • 同じ医療行為であっても患者個々に条件が異なる。同一患者における同一医療行為であっても患者の状態は一定ではないので、毎回許可を得てから実施する

レベル3:指導医の立ち会いを必須とする医療行為

  • 2年間の研修期間において、研修医単独での施行を認めない

処方

レベル1 レベル2 レベル3
定期処方の継続
臨時処方の継続
定期処方の変更
新たな処方(定期・臨時等)
高カロリー輸液処方
酸素療法の処方
経腸栄養新規処方

危険性の高い薬剤の処方(危険性の高い薬剤としてリスト化されている処方)
・向精神薬
・抗悪性腫瘍剤
・心血管作動薬
・抗不整脈薬
・抗凝固薬
・インスリン

麻薬処方:法律により、麻薬施用者免許を受けている医師以外は麻薬を処方してはいけない

 

注射

レベル1 レベル2 レベル3
皮内注射
皮下注射
筋肉注射
静脈注射
末梢点滴

輸血

危険性の高い薬剤の注射(危険性の高い薬剤としてリスト化されている注射)
・向精神薬
・抗悪性腫瘍剤
・心血管作動薬
・抗不整脈薬
・抗凝固薬

動脈内への薬剤投与

麻薬剤注射:法律により、麻薬施用者免許を受けている医師以外は麻薬を処方してはいけない
関節内注射

診察・その他

レベル1 レベル2 レベル3

医療面接
全身の視診、打診、触診
基本的な身体診察法:泌尿・生殖器の診察、小児を除く

直腸診

耳鏡、鼻鏡、検眼鏡による診察
インスリン自己注射指導
血糖値自己測定指導
診断書の複製
診療録の作成

紹介状の作成
診断書の作成
治療食の指示
内診
死亡診断書の作成
重要な病状説明
インフォームドコンセントの取得

検査

レベル1 レベル2 レベル3
正常範囲の明確な検査の指示・判断
一般尿検査、便検査、血液型不適合試験、血液・生化学的検査、血液免疫血清学的検査、髄液検査、細菌学的検査・薬剤感受性検査など

他部門依頼検査指示
心電図・ホルター心電図指示、単純x線検査指示、肺機能検査指示、脳波検査指示など
超音波検査の実施
動脈圧測定、中心静脈圧測定
MMSE(Mini-Mental State Examination)
聴力、平衡、味覚、嗅覚、知覚検査、視野、視力検査、間接喉頭鏡
アレルギー検査(貼付)、長谷川式認知テスト



検査結果の判読・判断
心電図・ホルター心電図判読、単純x線検査判読、肺機能検査判読、脳波判読、超音波検査判読など

インフォームドコンセントの必要な検査指示
CT検査・MRI検査・核医学検査など
筋電図、神経伝導速度、内分泌負荷試験、運動負荷検査

 

 

以下の侵襲的検査
負荷心電図検査
負荷心エコー検査
直腸鏡検査、肛門鏡
消化管造影、脊髄造影など

以下の危険性の高い侵襲的な検査
胸腔・腹腔鏡検査
気管支鏡、膀胱鏡
消化管内視鏡検査・治療
経食道エコー
肝生検、筋生検・神経生検
心・血管カテーテル検査
発達・知能・心理テストの解釈

処置

レベル1

レベル2 レベル3

静脈採血
皮膚消毒、包帯交換
外用薬貼付・塗布

気道内吸引、ネブライザー
気管カニューレ交換

局所浸潤麻酔
抜糸
ドレーン抜去

皮下の止血
包帯法

動脈血採血

創傷処置、軽度の外傷・熱傷の処置

導尿、浣腸
尿カテーテル挿入と管理-新生児・未熟児は除く
胃管挿入と管理
皮下の膿瘍切開・排膿
皮膚縫合
ドレーン・チューブ類の管理
動脈ライン留置
小児の静脈採血
人工呼吸器の管理
透析の管理
静脈留置針の穿刺、留置

以下の侵襲的処置

骨髄穿刺、胸腔穿刺、腹腔穿刺、腰椎穿刺など、髄腔内抗癌剤注入


以下の危険性の高い侵襲的な処置・救急処置
マスクとバッグによる用手的換気、エアウェイの使用(経口、経鼻)、ラリンジアルマスクの挿入、気管挿管、除細動、IABP(Intra AorticBalloon Pumping)、PCPS(PercutaneousCardio Pulmonary Support)など
中心静脈カテーテル挿入・留置
小児の動脈穿刺
針生検
脊髄麻酔
硬膜外麻酔
吸入麻酔
深部の止血
深部の膿瘍切開・排膿、深部の嚢胞切開・排膿、深部の嚢胞穿刺、深部の縫合

  • レベル3のうち下線の行為については、救急救命のためただちに施行が必要とされる場合には研修医が単独で実施可能
  • 電子カルテの記載は、原則として48時間以内に指導医の承認が必要
  • 紹介状、診断書は、患者・家族に手渡す前に指導医のダブルサインが必要

ダブルサインとは:研修医と指導医の間で交わされる行為、記事記載について事後承認扱い。研修医が入力した「診察記事」、「電子コメント」に対してのみ指導医が事後承認を行う。

(参考)

カウンターサインとは:医学生と指導医の間で交わされる行為、診察記事について事前承認扱い。